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美上みつ子の世界旅行記 イタリア編① ~Macrobiotic Report in Italia~

2016/09/05 13:36 に Mitsuko Mikami が投稿   [ 2016/09/06 5:15 に更新しました ]
5月11日から15日間、北イタリアのボローニャでマクロビオティックのクラスや食事会、コンサルテーションなどを行ってきた。この訪問は1986年にカリフォルニア州バークレーで知り合い、その後もメールで近況を伝えあってきたイタリア人、マリネラが企画して招待してくれたもので、今回は久々の再会となった。

サイエンスエンジニアリングを専門とする彼女の夫ロベルトは会社を経営する傍ら、ボローニャ大学でも教鞭をとり、医者である父親の影響で医学や栄養学にも精通している天才肌である。その彼ががんの研究中、マクロビオティックに興味を持ち出し始めたのが約10年前。最近夫妻の親友が白血病にかかり、骨髄移植をしたり、マリネラ自身も体調が悪く、親しいドクターから勧められたマクロビオティックとは真逆のキトジェニックダイエット(高脂肪、高蛋白、低炭水化物)を4ヶ月やり終えた直後で、今度は以前から興味を持っていたマクロビオティックをもっと知りたいと思ったようだった。


ボローニャはイタリア北部にあり、欧州で一番古いボローニャ大学を有する学術都市で、文化水準も高いと言われている。街全体の見た目が中世の歴史そのものであり、その古い建物が図書館として使用されており、商店やカフェ、レストラン、住宅などとして近代的感覚で使われ、中と外がまさに対照的なお洒落で落ち着いた街である。
食に関してもボローニャはミラノなどに比べ保守的傾向が強いような気がする。ボローニャソーセージやパスタボロネーゼ、肉やチーズなどの詰め物入りパスタ(トルテリーニ)は名物である。チーズ、薄い生ハム、カカオの含有率の高いチョコレートはマリネラの家でも必需品である。

イタリアの伝統食に誇りを持っているマリネラやその友人にマクロビオティックをどのように伝えたら効果的なのかを考え、今回はまず発酵食である味噌や醤油をイタリア風にアレンジして日常的に使ってもらい、全粒穀類や根菜類を取り入れ、腸内環境を整えて免疫力を高める工夫を料理で示し提案することにした。

ボローニャに行く前、北カリフォルニアのオーランドに約450本の梅や果物の木の自然農園を持つ桜沢夫妻の愛弟子、八木数子先生と電話でお話しをしていた時、たまたま彼女の古くからの友人であるダリオさんがイタリアで味噌作りをしていて、彼女もご主人と何度かイタリアに出向きマクロビオティックの料理教室をしたとの話しが出た。美味しい味噌の入手に困っていたマリネラに早速その情報を伝え、マリネラが直接ダリオさんに電話したところ偶然にもボローニャから車で1時間半ほどのところで今もダリオさんは味噌作りをしていることが判明。私が到着した数日後、早速マリネラの運転でトスカーナの彼の工房を訪問する機会を得た。

ダリオさんは元々北イタリアで家業のワイナリーを経営していたがその後マクロビオティックを知り、90年には更に勉強するためカリフォルニアに渡米。当時、相原ヘルマン氏夫妻が主催する”ベガ”というマクロビオティックのセンターで学んだ後シェフとなった。ベガを出てからフロリダやカリフォルニアなどでレストランの仕事をするも元々ワイナリーで発酵という作業に関わっていた彼は、シェフは自分のしたいことではないと気付きイタリアに戻り、現在の場所に落ち着いて味噌作りを始める。今では100本の梅の木を無農薬で栽培し、梅干し作りも手がけ、商品を自然食スーパーなどに卸したり、ファーマーズマーケットに出店しているとのこと。ベガに滞在中、八木夫妻と出会い、カリフォルニアで結婚の折には八木夫妻と相原夫妻がそれぞれ新郎新婦の親代わりとなったそうだ。麦味噌、米味噌、の他ひよこ豆やレンズ豆の味噌、ごまやナッツなどで味をつけた風味豊かな特製味噌、醤油、溜まり醤油などいろいろな商品作りに取り組んでいる。マリネラは彼から直接マクロビオティックや発酵食の事などをイタリア語で3時間以上も学ぶ機会を得て、それからのクラスの折には参加者に貴重な話しをイタリア語でしてくれることができた。この工房はひと里離れた深い山奥にあり、そこに辿り着くまでマリネラは何度も彼に電話で行き方を尋ねなくてはならなかったが、帰りには各種味噌、醤油などこれからのクラスや食事会に不可欠な基本食材をたくさん入手できたので苦労して行った甲斐があったというものだ。今後さらにダリオさんの味噌、醤油がイタリアで普及していくことを望みたい。
Dario Benossi (http://www.lolmaia.it/)

ある晩、マリネラ夫妻がボローニャのマクロビオティックレストランに連れて行ってくれることになった。我々が興味津々で中に入ると驚いたことに初回者は入会金10ユーロが必要とのこと。更に身分証明書の提出を求められた。何か変だなと思いながらもパスポートを預けることになった。案内された席に座るとすぐそばの壁に見覚えのある桜沢先生の額入り写真が数枚かかっている。すかさず携帯で写真を撮ったところそれを見ていたホールの男性が飛んできて店内での撮影は一切禁止だという。
間もなく運ばれてきた食事はレタスのサラダ、ほうれん草のソテーなど4種類の野菜と僅かな白いんげん豆の水煮と玄米が少々載ったプレート、約10ユーロだったと思う。そこまでの時点で異様な雰囲気に飲み込まれた私は、すぐにもここから出たいというロベルトの波動を感じて早く食べなきゃと焦り、はっきり言って野菜がどう調理されていたのか、味さえよく思い出せない。案の定、物静かなロベルトは無口のままプレートをさっさと食べ終え、帰りの車中では”悲しくなった”とただ一言。
客の嗜好に媚びることなく今時珍しく厳格にマクロビオティックの基本食を提供しているこのレストランにはある意味で脱帽ではあるが、口では説明できないその場の重い波動にある種の緊張感さえ覚え、ジョークで笑い飛ばすこともできなくなった我々は何とも後味の悪い気持ちで帰路に着いた。家に着くなりマリネラは素早く冷蔵庫から巨大な肉の塊を取り出し、スライサーでそれを薄く切り、慣れた手つきでメロンに巻いたものをデザートとして大量に皿に盛り、ロベルトの機嫌をとったのは言うまでもない。しかし、アジト的な感じのそのレストランはウィークデーの晩にもかかわらずほぼ満席であったのが印象的である。
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