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マクロビオティック 香港編

2017/09/19 3:58 に Mitsuko Mikami が投稿   [ 2017/09/19 4:14 に更新しました ]
4年ぶりに”ジョアサン!”で私の1日が始まりました。8月の香港の暑さは覚悟の上でしたが予想を上回るものがあり、かき氷があったら食べるよりまず顔を突っ込みたいと思いました。

今回の依頼は香港で有名なソーシャルワーカーの親族の方からでした。患者さんはオーガニックナチュラルの店を経営する傍ら、緑色生活教育基金(Green Living Education Foundation)の代表理事でもあります。また寄付でまかなう菜食レストランや玄米菜食のクッキングクラスを運営する他健康相談も頼まれたりカトリック教会の様々な活動にも参加する敬虔なクリスチャンであり5人の孫の優しいおばあちゃんでもある長年のベジタリアンなのです。そんな彼女が7月に予定していたカナダでのバカンスの直前に激しい腹痛を感じ病院へ行ったところ即入院。検査の結果急性白血病だということが判明しました。

その時白血球はほぼゼロに等しく、免疫力が著しく低下しているためすぐさま香港で一番有名な大病院へ転院。血小板も少なく、怪我をしたら血液が止まらない危険な状態のため家族以外の面会も許されません。そのため否応なく抗がん剤治療が始まりました。これはA,Bで1セットになっているもので合計6セットで終了する見通しですがこの期間中に骨髄移植も予定されています。ABにそれぞれ2週間かかりますが体調が良ければAとBの間に1週間ほどの帰宅が許されます。

私が行った時は丁度最初のAが行われていて患者さんは入院中でした。とはいえ、帰宅までの時間を無駄にする訳にもいきません。以前の経験もあり、少しでも化学物質の副作用を抑え、体内を浄化するため早速玄米スープや玄米クリーム、梅しょう番茶などのお手当のドリンクを小さな保温ジャーに入れて、胡麻塩、鉄火、日本から持参した梅肉エキス、陽泉、ゴマ塩などと一緒に病院に運んでもらうことにしました。

あとは患者さんとその家族にお料理を毎食作るフィリピン人の住み込みヘルパーの二人にマクロの料理法を伝授しながら冷蔵庫の中や食品庫を徹底チェック。ヘルパーさん達の同意を得て消費期限切れのものは思い切って捨てながら患者さんが食べていいものと悪いものを教え必要な物を買い足します。
フィリピンヘルパーさんとキッチンで 患者さん家族、左から2番目が患者さん
さていよいよ患者さんが一時退院してくることになりました。前日は親戚のヘルパーさん達も皆駆り出され鉢植えの植物も全部室外に出すなどして家中の大掃除です。迎えに行くドライバーも車内の殺菌瘡毒に神経をとがらせていました。病院では患者さんの栄養の80%が輸液で行われ、後の20%が経口食となっていました。抗がん剤の副作用の為舌が腫れ上がり喉がふさがりそうで息をするのも大変で眠れなかったりガスが体内に籠ることから生じる言葉では言い表せない苦しさなど様々な辛い体験を経た割には体重減少もあまりなく思ったより元気な1回目の一時退院でした。

この1週間の自宅での食生活管理はかなり重要です。この間に誤った食事療法で体調が悪くなったり体力がなくなればすぐに2回目に予定されている治療に入れなくなります。責任重大ですが困ったことは化学物質や度重なる輸血のせいか味覚や嗅覚が超過敏になり、嗜好が完全に変わったことです。以前は好きで毎日食べていた玄米やブロッコリー、カリフラワー、かぼちゃ、大豆製品など体が受け付けなくなり、その時によって食べたいものが大きく変化するということです。また抗がん剤による体内での化学変化のため、発酵食を病院から禁止されているという事。従って発酵食品を使ってまず良質な血液を作りだす腸内の善玉菌を増やし浄化をすることが難しくなります。長年のビーガンとして培った味覚が変わり子供の頃お母さんが作ってくれたお料理の味が懐かしいのだとか。以前日本食レストランで食べたことがある茶碗蒸しの味を突然思い出し、是非作って欲しいとも言います。こういう状況下でできる事は患者さんの欲しがるものを否定せず、できる限り良質の素材で食物繊維や海藻、葉野菜などを取り入れ、梅干しやゴマや味噌なども隠し味に使ってお料理する事だと判断。一度手作りの皮で野菜餃子を作り玄米ビーフン入りの野菜だしスープに入れて出したところこれはとても喜ばれました。
食事1 食事2 クラスの夏バージョン

マクロビオティックではヘモグロビンは生体内原始転換で野菜の血液であるクロロフィルが作りだすと考えますが近代栄養学ではヘモグロビンはそれをたくさん含む赤い血を含んだ肉から摂る、とするのが常識です。また血液もマクロビオティックでは緊急時に一時的に骨髄で作られる他はほとんどは腸が赤血球が作りだすと考えるので腸内細菌を増やし、腸内環境をバランスよく保つことが免疫力を上げ、病気を防いだり、改善する基本となりますが近代栄養学ではそこは重視されていないので基本的になんでも食べて良いことになっています。しかも彼女の場合朝から肉や魚や卵を欠かさず食べることが必要になっているのです。患者さんの意志や判断力もあるので難しいところですがこちらがいくら頭で考えて良いと思うものを提供して自己満足しても、食べてもらえなかったり、患者さんが食事に心を許し、食後に幸せな、満ち足りた気持ちにならなければ細胞レベルでの癒しの食事にはなりません。

香港は亜熱帯と位置付けられているように地元の野菜は苦瓜、ナス、トマト、冬瓜、パパイヤ、レタス、キュウリ、インゲン、とうもろこしなどが多く、それにだしとしての肉、乾燥ホタテ、豆類などと長時間一緒に煮たスープや炒め物が一般的に好まれています。患者さんにナスやトマトは使いませんがそれに似たようなスープを作ると落ち着くようで患者さんは久しぶりに機械に囲まれた入院生活から解放され、家族とともに食卓を囲んでとても嬉しそう。丁度一時帰宅中だった時の娘さんの誕生日にはこっそりマクロケーキを頼まれ作ったところサプライズのバースデーパーティーとなり大変喜ばれました。元来陽性タイプのがっしりした体格で、おおらかな上明るく誰からも好かれるオープンな性格の患者さんは私とも会話が弾み深刻なはずの入院中の話しもなぜか大笑いの連続となりました。
中国風スープ2 中国風スープ1 娘さんに焼いたバースデーケーキ

帰宅中患者さんは血液検査のためにだけ病院へ行きましたが抗がん剤なしなのに数値的には快方に向かい、渡された資料を見せて説明してくれました。運動を奨励したところ毎朝朝食前に旦那さんと二人で公園へ行き3千歩から5千歩まで歩くようになり太極拳までしてお腹を空かせて帰ってくるという生活パターンもできました。運動することによって体内のガスも自然に抜け、体力的にも自信がついて明るさを増した彼女は誰も白血病だとは思わないほど元気に見えます。こうして1週間の最初の帰宅は無事終了しました。2回目からのきつい薬に備えてその日の朝髪を娘さんに剃ってもらいすっかりお坊さんのようになった彼女はスカーフをおしゃれに巻いて頭を隠し新しいファッションよ、とおどけて笑っていましたがまた辛い治療が待ち受ける病院に戻るのだと思ったら不覚にも私の方が急に涙がこみ上げてきてしまいました。

クラス フィリピンヘルパーさん Tai-Po-Marketの駅
患者さんの入院中は病院に運ぶおかゆや玄米と白米半々のクリーム、野菜スープ、などを作る他ヘルパーさんたちと一緒にオーガニックの新鮮な野菜や食材を求めるため市場やスーパーに行ったり、それを使って料理教室も3回行いました。地元の九龍街市場や有名なTai Po Marketにも行きました。ここには地元産の新鮮なオーガニック野菜やフィリィピンの山奥で自生していて癌に効果的と言われる薬草などもいろいろ手に入ります。ただ、大きな食用蛙が鳥かごのような四角いカゴに重なるように入れられて時折目をパチクリしていたり、小さなカゴに入れられて生きたまま売られていくため鶏が時々助けを求めるようなか細い鳴き声をあげているのを聞く事があり、私たちはこうして生き物の命を頂いて生きているのだということを再認識させられます。
癌に効くという薬草 患者さん専門の料理担当ヘルパーさん 市場の野菜



香港滞在中リマクッキングスクール卒業で香港在住のお二人からメールがあり、日時の都合上別々の日にお会いしました。以前この月刊誌でもご紹介されている小林さんと山田さんのお二人です。

小林さんは香港在住6年目になるそうですが、3年かけて香港からリマに通い師範を終了なさったのだとか。今は中国茶中心の茶話空間という優雅なお茶会を自宅で主催なさっているのだそうです。ランチの時間だったので私の選択で連れて行っていただいたのはオーガニックローフードレストラン。少し抵抗はありましたがとてもしっかりお料理を作っているとお聞きしてどんなメニューか体験するチャンスと思いました。

マーケット 小林さんとローフードカフェで ローフードの生暖かいスープ

そこで最初に出てきたのが生ほうれん草、バナナ、パイナップルの生温かいスープ。これらは何年も食べていない物なので食後の体調が気になりましたがその後もドラゴンフルーツなどが入ったサラダ、カリフラワーをご飯に見立てたビビンバ風丼とフラックスシードパウダーで作ったハンバーガーをシェアーして食べました。その後カフェ隣のショップで買い物をしてついでにもらっておいたお店の情報紙を後で患者さんの家族に見せたところ、なんとそこは患者さんのお姉さんの旦那様が経営するレストランだと判明。まさに偶然でした。さらに不思議なことはそのミーティング前日からあった頭痛がローフードレストランの後すっかり解消し、頭が爽快になったことです。しかもその後身体的不快感が何も生じませんでした。

ひと月の滞在を終えホッとしていた帰国前日には丁度日本から戻られたばかりの山田さんと私の宿泊先の近くのカフェでお話ししました。現在は大学で広東語と北京語を勉強している関係上、お子様二人と一緒に香港に在住し、マクロビオティック活動も行いながら、香港で職を得ることも視野に入れて生活されている逞しく、優しいお母さんです。こちらも小林さん同様、初対面とは思えないほど話しが弾み時間の経つのを忘れました。香港でマクロビオティックを実践するのは正直なところ容易ではありませんがマクロビオティックの考えかたは彼女の生活の支えになっているように感じました。

毎回のことですが今回の香港でも毎日が気づきの連続でした。今回の患者さんのようにいくら食に気をつけていても病気になったからには自分が作った原因があります。それは本人にしかわからないことですがそこを改善しない限り、一時的に回復したとしてもまた再発する可能性があります。今回患者さんは病気を通して大きな気付きを得たようです。退院したらもう以前のように過剰なストレスを伴うオーバーワークはせず自分の心と体の声を聞いてゆっくり過ごすつもりのようです。

最近では遺伝子解析技術が発達し、Genomics などの検査を受けると自分の細胞レベルの栄養情報やその他いろいろなことが詳しくわかるようになってきています。しかし科学的な技術力がいくら進歩しても、それを適切に利用できるように我々の心も進化していかないと”豚に真珠”になってしまいます。

今回の香港滞在を通して改めて我々は自然の産物であり、自然に反するアンバランスな日常生活の積み重ねがいかに体に負担になるか、ということを痛感させられました。最近では異常気象が益々激しくなる中、病気や犯罪や国家の争いも増える一方です。我々の心の反映である地球の健康を取り戻すためには一刻も早く我々ひとりひとりが健康に生きるため最も大切な事に気付き、できる事から行動を始める事が自分の為だけではなく地球の健康のバランスを取り戻す上での大きな鍵となるのではないでしょうか。
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